盗賊のお仕事

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姫の様子から何かを察したのかヒリエがひっそりとレイジに向かって胸の前で十字を切る。 ルナ 『その…… 褒美、と言ったら誤解を招きそうなので訂正します。 御礼というか貰ってほしい物があるんですの……』 相変わらずモジモジと肝心な事を言わないルナに鈍感がデフォ設定の主人公レイジもさすがに何かを感じとる。 しかし頭に浮かんだある事を「まさか」の一言でかき消す。 この時、自分の直感を信じてなりふり構わずこの場から逃げ出していれば良かったと後から死ぬ程後悔するのはまだ先の話である。 ルナ 『私を……』 レイジ 『???』 ルナ 『私を……。 私を貰って下さい!!』 レイジ 『………』 ヒリエ 『………』 グリュート 『………』 一大決心したルナの叫びに似た告白によって謁見の間の時は凍り付く。 ただ一人、この事態を予測していたヒリエを除いて。 ………… ………… ………… そんな凍った空気の中、一番最初に時を動かしたのは親バカなおっさんだった。 グリュート 『待て待て待て待て! 待てぇぇぇぇえいっ!! 許さん! 父さんは許さんぞ!』 ルナ 『何故ですか?』 グリュート 『何故って、小さい頃は父さんと結婚するって言ってたじゃないか!?』 いい年したおっさんがダーッと涙を滝の様に流しながらルナに詰め寄るが。 ルナ 『何を言ってるんですか? 親子で結婚できるはず無いではありませんか。 というより、お父様と結婚なんて真っ平御免ですわ。』 ルナの意外に冷静な一言によって再びコキンと固まる。
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