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グリュート
『る、ルナさ~ん?』
恐る恐る声を掛けるも耳に入っていないのか正面を向いていて背後しか見えないグリュートには愛娘が今現在どのような心境なのか推し量るすべはない。
ルナ
『ふふふふふっ。
ワタクシにあんな事(頬と頬をくっつけた事)をしておいて逃げ出すなんて…。』
グリュート
『あの~、ホラ、初恋は実らないってよく言うじゃないか。
だからお前もあの男の事は諦めてだな。』
だが娘はその忠告をこれっぽっちも聞いちゃいなかった。
ルナ
『……逃がしませんわ!
兵士の皆さん!
先程の男性、レイジ・ブラスタをワタクシの元へ連れて来て下さい!』
今まで人前で滅多に意見する事の無かった内気な少女の突然の豹変に広間の皆は驚いていたが。
ルナ
『早く!
連れて来た者にはワタクシから褒美を取らせます!』
急かす言葉に脊髄反射で走り出す。
褒美云々よりも美少女の頼みという事の方が効果が大きかった。
謁見の間にいた兵士達は各々それぞれの武器を持ち慌ただしくレイジの後を追いかけ出てく。
兵士が出て行く間、ルナは熱を帯びた表情で初恋の相手レイジを脳裏に思い浮かべる。
恋は人を変える。
まさしくその実例だった。
少々変わり過ぎた感も否めないが。
ルナ
『ふふっ。
愛の追いかけっこの始まりですわ。』
突然の変わりように父親はただ呆然と娘を見ていた。
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