盗賊のお仕事

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さてさて、お姫様が追手を差し向けた頃勢いで逃げ出したレイジの方はといえば。 レイジ 『やべぇ、迷った。』 迷子になっていた。 謁見の間から猛ダッシュで逃げ出したはいいもののあまりに広過ぎる城内に完璧に道に迷っていた。 それどころかレイジ的には一階に降りたはずなのだが窓を見れば外の景色は地上まで10メートル以上はある。 レイジ (降りたはずなのに何でこんな高いんだよ! この城はそんなに迷子を増殖したいのか!) 思いっ切り心の中で毒づいてみても具体的な解決策は浮かばない。 レイジはこの年になって迷子かよ、なんて軽く嘆いているが実はこの城、対侵入者用に内部がかなり複雑になっていて城の中でも把握出来ているのは一定の階級以上の人間だけ。 ならば一般の兵士はどうしているのかと言えば彼らは自分が働く部署以外にはまず行かない、でなければ城で働く彼らでさえも迷子になってしまうからだ。 レイジはこの城の対侵入者という側面に見事に引っ掛かったといえる。 上に行ったかと思えば下へ、下へ行ったかと思えば上へ行ってしまう、どれだけ走っても代わり映えのしない廊下に体よりも心が先に疲れ思わず足を止めてしまう。 レイジ 『出口どこ……』 呟いてみてもそれに答える声があるわけがない。 はぁっとため息を一つついて辺りを何気なく見渡して廊下の曲がり角にいた一人の兵士と目が合う。 レイジ 『やばっ。』 反射的にそう思ったもののもう遅かった。 兵士 『いたぞ~!』 兵士は大声をあげると"武器を片手に"全速力でレイジに向かってきた。
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