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逃げる逃げる逃げる。
とにかく逃げる。
道を選ぶ余裕なんて無い。
曲がり角があれば曲がり十字路があれば直感で突進む。
兵士
『待てゴラァ!』
逃げ続けるレイジに兵士の苛立ちも膨れ上がり言葉遣いが乱暴になっていく。
ダダダダダダッ!
そうこうしている内に追いかける兵士の数は増えていき、当初は10数名だったのが今や軽く見積もって50は越えている。
そんな逃走劇も突然終わる。
ピタッとレイジの足が止まった。
そこは廊下の行き当たりのバルコニー。
勢い余ってバルコニーまで出たはいいが道はそこで終わっていて退路には50数名の殺気立つ兵士達。
眼下に広がる景色はやはり地上まで10メートル以上はあるだろうか、そのまま飛び下りれば無事ではすまないだろう。
追い詰めた!
兵士達の誰もがそう思う中にあって当の追い詰められたはずのレイジは『ふっ』と口元に不敵な笑みを浮かべた。
そして兵士達の見ている前で手摺の上によじ登る。
レイジ
『アァァァァァイ』
兵士
『???』
レイジ
『キャァァァァン』
兵士
『っ!
誰か!
ヤツを取り押さえろ!
飛び下りるつもりだ!』
だがもうすでに追い詰めたと油断していた兵士に素早い動きはできず阻止しようと手を延ばしたところでレイジには届かない。
レイジ
『フラァァァァイッ!!』
そして兵士達の視界からレイジが消え失せた。
その場にいた全員が数秒後聞こえてくるだろう「ぐしゃっ」という肉のひしゃげる音を想像していたがいっこうに聞こえる気配はない。
兵士
『どうなってんだ…』
兵士の一人が恐る恐る手摺の上から地上を覗き込む。
そこには元気に走って一目散に逃げていくレイジの姿があった。
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