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レイジ
『いや、あのさ…』
頭の中で断る理由を自分にできうる限りの高速で脳内にリストアップしていくもそれは空しくも途中で遮られる。
リリ
『もし、お断りなさるならレイジ様の後を追わせて頂くだけですのであしからず。』
サラッとあたかも当然の如く放ったリリの言葉にレイジはもう金魚みたいに口をパクパクさせるだけで何も喋れない。
現にこうして自分を追って現われた以上目の前のメイドはやると言ったら間違いなくやるだろう。
必死に葛藤を繰り返した結果、遂にレイジの心は折れる事になる。
ストーカーみたいに跡をコソコソ追われるぐらいならと。
それにさっき武器を構えた時に分かった事だがリリはかなり腕が立つ、これは間違いないだろう。
だがしかし、腕が立つからと言って女の子が一人で自分を追うと言うのはどうだろう。
その途中でモンスターに襲われる事もあるだろうし下手をすれば魔人に襲われる可能性だってゼロじゃない。
ぶっちゃけ、レイジの性格からしてみれば先程のリリの言葉は脅迫以外の何物でもない。
黙ってレイジの返答を待つリリを見る。
レイジ
(放って……おけないよな。)
そこにいるのはいくら戦えると言ってもレイジにはやはり一人の女の子にしか見えない。
この世界、女性が戦うのも珍しくない事だがレイジは女性が戦い傷付くのを良しとしない。
ああもうっ!!と怒りが心の底から湧いて来る。
その対象は主に自分をこんな運命に放り込んだいるのかいないのかもよく分からない神様。
それとこんな運命を甘んじて受けてしまう、特に目の前の少女を放っておけないような自分自身の甘さに。
レイジ
『……分かったよ』
気付けば絞り出すような声でレイジはそう答えていた。
リリ
『ありがとう御座います。』
レイジの返答にリリはスカートの両端を軽く摘み上げ一礼して見せた。
そんなリリの様子にレイジは本日何度目かのため息を吐く以外のリアクションはとれなかった。
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