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夜まで待つ間に現在、表を歩く事ができないレイジは自分の現状をリリに説明する事にした。
仕事で城に行く所から始まり今に至るまで、レイジの話を頷くでも相槌を打つでもなくリリはただ黙って聞いていた。
話が終わって開口一番。
リリ
『そうですか。』
喋ったのはたったの五文字だった。
あまりに淡泊なメイドの反応にレイジは話を聞いていたのか疑うがどんなに観察しても眉一つ動かさない人間の心理なぞ若干17歳のレイジには分かるはずもなくとりあえず聞いていたという事にしておく。
しかし、と目の前のメイドを見てレイジは思う。
先に対峙した時もそうだったがメイドって武器を持つもんだったっけ?と。
レイジの頭の中にある知識では普通はメイドってものは武器なんて物騒なもんじゃなくてモップとか清掃道具を持って屋敷の中で働くもんじゃなかったか。
そんな探るようなレイジの視線に気付いたのかリリは一言。
リリ
『何か?』
やはり簡潔である。
レイジ
『いやさ、何で俺を追っかけて来たのがゴツいおっさんとまでは言わないけどリリみたいな普通のメイドを寄越したのかと思ってさ。』
普通のメイドはナックルなんて装備していないと思う。
リリ
『単純な事です。
使用人の中でわたくしが一番武術に優れていた、そのわたくしに主が命令した、わたくし共にとって主の命令は絶対ですので。』
淡々とリリは告げる。
その表情は私情っていうか感情自体あるのか疑ってしまう程の無表情。
このメイド程、愛想と言う言葉と無縁なメイドもいないだろう。
レイジ
『あ~、アイツの我儘に突き合わされたクチか。
主人があんなんじゃ苦労するだろ。』
リリ
『……それについては回答を拒否させて頂きます。』
答えずに済まそうとしたリリではあるが答えるまでの僅かな間が実際はどうなのかを如実に語っている。
そんなリリの様子に苦笑するレイジ。
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