逃亡者

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リリ 『いえ、ですからレイジ様の判断は正しいと…』 レイジ 『じゃなくてその後!』 リリ 『クーデターが起こるかもしれないと。』 レイジ 『クーデターだって!?』 普段の生活ではあまり聞き慣れない単語に驚愕する。 レイジ 『その話、確かなのか?』 いきなり出てきたその言葉、リリの平静な態度もあってかにわかには信じられない様子でレイジは問い質す。 リリ 『ええ、我が国の諜報部からの情報ですから間違い無いでしょう。 具体的に誰が、とまでは分かっていませんがそういう計画があるのは確かなようです。 ちなみに現在も何人かの間者が城内にいるはずです。』 レイジ (諜報部って……。 ただのメイドじゃなかったのか。) そう思い改めて目の前の無表情メイドを見る。 レイジに対する態度などから見ても敬語は使ってはいるもののあくまで言葉遣いだけ。 本当に使用人なのか疑ってしまう。 接客とかはどうしているんだろうか。 リリ 『どうかなさいましたか? わたくしの体を舐め回すように見ておいでのようですが。』 レイジ 『………何でもない。』 微妙に棘を感じる言葉もリリの詳しい素性もあえて考えない事にした。 その事は後で聞けばいいと今は別の事を考える。 リリからもたらされた情報。 即ちクーデターの事。 城の中での出来事を思い出す。 そしてその間に出会った人達。 最初に浮かぶのはヒリエ。 あの人の良さそうな眼鏡青年がクーデターを起こす様を想像するが全く思い浮かばない。 レイジやグリュート、ルナへの言葉遣いや態度からしてすでに人の良さが滲み出ている青年がそんな事をするとは到底思えなかった。 あとは精々が姫と国王、謁見の間にいた面々くらい。
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