逃亡者

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そもそもが城の人物に詳しくないレイジにクーデターの首謀者など分かるはずもなかった。 今のレイジに興味があるのは「誰がどうして」よりも「その後どうなるのか」にある。クーデターとなれば王族であるルナやグリュートはタダではすまないだろう、ヘタすればその被害はヒリエや何も知らない一般の兵士にも及ぶかもしれない。 無論、政権が変われば城下の人達にもその被害は及ぶだろう。 考え込みだしたレイジを見てリリがポツリと。 リリ 『まさか…。』 レイジ 『………。』 その呟きが耳に届いていても返事はしない、代わりにリリの顔を見て苦笑い。 それがリリの言葉への返答代わりとなる。 リリ 『……黙っておけばよかったようですね。』 レイジ 『俺も聞かなきゃよかったよ。』 聞かなければ何も知らずにこの国を出ていた。 だがもうすでに遅い、レイジは聞いてしまったのだ。 レイジ 『知らないフリしてさっさと出て行きゃいいんだろうけどさ。』 一旦言葉を切ってやれやれとかぶりを振る。 思い出すのは顔を真っ赤に自分へ告白してきた少女。 そんな娘を溺愛して止まない国王。 眼鏡をかけた優しいけれど頼りない青年。 月光姫を愛して暴走する兵士達。 城の中で知り合った人は決して多くはない。 それでも、それでもだ。 知り合った人達が苦しむかもしれない事を知っていてタダ逃げ出す事はしたくない。 何も自分だけで解決しようって言うんじゃない。 何か手助けくらいはと考えてしまうのだ。 そんな自分の性分を知ってか苦笑のままさっきの言葉の続きを続ける。 レイジ 『俺ってそういうの苦手なんだよ。 何とか出来るんなら何とかしたい、そう思っちゃうんだよな。』 リリ 『……流石はあの方の御子息です。』 レイジ 『よしてくれ。 アイツは関係無い。 これは俺がそう思ってそうしたいだけの話さ。』
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