ゆきのせい

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 人間ならば目を回す所なのでしょうが、私に目などありません。少女の為すがまま、私は庭を転がりまして、地面の雪を巻き込みながら徐々に体を大きくしていくので御座います。  気付けば私は娘の胸元までもある大きな雪の塊となって居りました。  はて、これは如何なものかな? と思って居りましたらば、娘は小さな掌で、も一つ雪玉を作りまして、私の時と同じ要領で雪玉を転がし大きくしていくので御座いました。  そちらの雪玉は私よりも一回り、いや二回り程大きく成りまして、娘の背丈近くもある大玉へと姿を変えていきました。  娘は尚もその大きな雪玉を転がそうとしたのですが、パタリと庭の真ん中で動かなく成ってしまったので御座います。すると。 「パパー! ママー!」  娘は玄関へと走り出し、家の中からパパ様とママ様を連れて来たので御座います。  二人の大人に掛れば動かない大きさでは御座いません。パパ様とママ様は娘の指示に従いながら、大きな雪玉を庭の隅に在る松の木の隣へと転がしました。  更には私をも、その大玉の側まで転がしまして、三人掛かりで私を持ち上げ、大玉の上に置くので御座いました。 (これは鏡餅? いえいえ私は雪の精霊で御座いますから、これはもしや……)  私の予想は見事に的中。私の上には赤いバケツが乗せられまして、スキーのストックを手に見立てグサリグサリ、鼻の位置にはまっ赤なボール、眉毛と目鼻口を墨汁で黒く染めた雪によって作ってくれたので御座います。正しくそれは、本格的な雪ダルマで御座いました。  雪ダルマといえば、雪祭の雪像に迫る程の最上位種で御座いますから、私は感無量の想い。  しかも、娘は私にマフラーまで巻いてくれまして、手と成るストックの先には毛糸の手袋を、更にはなんと、スキー板を私の足元に差してくれたので御座います。  私は差し詰めスキーを滑る雪ダルマといった所でしょうか、ハイカラで御座いますな。  
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