ゆきのせい

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 娘はあの時と同じようにしながら、私の左隣に雪ダルマを作っていったので御座います。娘一人で作ったもので御座いますから、それは可愛らしい大きさの雪ダルマで御座いました。高さは精々、娘の胸元ぐらい、私の半分も無い小さな雪ダルマで御座います。  娘は庭の片隅に生えていた木の枝を折りまして、小さな雪ダルマの手と顔を作ったので御座います。  そして満足げな表情で私の前に立ちますと白い息を吐きながら語り掛けて来たので御座います。 「コタローだよ。仲良くしてね」  ほう、コタローですか、いい名で御座いますな。この小さな雪ダルマもきっと喜んでいる事でしょうな。 「これでユキコも淋しくないね」  私は娘のこの言葉を聞いて胸が締付けられる想いで御座いました。娘が独り佇む私を見て、寂しそうだと感じ、私の仲間を作っていたとは露知らず。いつになったら私と遊んでくれるのだろうか、などと自分勝手な事を考えて居りました。私は本物の阿呆で御座いますな。娘の純真な優しさに触れて、私は娘を一層愛しく感じたので御座いました。  先程からちらついていた粉雪は、徐々に成長し牡丹雪へと姿を変えて居ります。そんな中を私と娘とコタローの三人は御飯事をしながら遊んでいくので御座いました。      3  二週間後の事で御座います――。  私は落ち着き成らない状況で御座いました。  何故ならば、いつも私と遊んでくれていた愛しい娘が、玄関の前で見知らぬ少年と楽しそうに遊んでいるからで御座います。  その少年。背格好から推測しますと娘より一つ二つ年上といった所でしょうな。紺色でフードの付いた防寒着を着て居りまして、冬だというのに茶褐色の御顔をして居ります。雪焼けでしょうな。スキーでも嗜むのでしょうか、まだ幼い子供だというのに、凄い事ですな。とはいえ、雪ダルマである私もスキーを履いて居りますので、その辺は負けて無いので御座いますが。  
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