第二部 七章

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「ならば」 氏郷が手を振る。槍衾隊が氏郷の前に強固な壁を組み上げ、孫礼騎馬隊の前に立ちはだかった。 孫礼騎馬隊は臆することなく次々と壁に向かって突進してくる。その騎馬隊に合わせて無数とも思えるほどの槍が突き出される。 槍は兵を、馬を突き機動力を奪い、槍衾の攻撃範囲から逃れようと藻搔く。 そこへ左右後方の氏郷軍が殺到し、孫礼騎馬隊を一気に屠った。兵長も奮闘していたが衆寡敵せず、自ら槍衾へと突っ込み討ち取られた。 「敵騎馬隊が再び反転し待機、その後方から氏郷本隊が進軍、我らの騎馬隊は残念ながら」 孫礼の顔が歪む。唇を強く噛みすぎて血が滲む。 氏郷の騎馬隊は最初後方の部隊だけが反転して孫礼騎馬隊に突進していたのだ。 それを孫礼は、自身の騎馬隊が敵軍後方を蹴散らしているのだと勘違いしていた。だが前方の敵軍には乱れや焦りが見られず、攻撃の機を見極め切れずにいたのだった。 その対峙していた部隊が反転後退してようやく孫礼は気付いた。慌てて追いかけるべく軍を動かすが既に大勢は決しており、今に至る。 「氏郷はなんとしても我が討つ、参るぞ」 「しかし、騎馬隊がやられて我らが不利では。それに典満隊も引き離されております。正面から堂々とでは……」 孫礼の副官が血気に逸る孫礼に忠告する。 「確かにそうであるな。すまぬ、少し焦っておった。しかし我には知略が欠けておる。ここは賈詡殿に知恵をお借りしよう」 孫礼はすぐさま賈詡に伝令を送ると、部隊を下げて固く守った。  
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