一章

10/14
前へ
/2660ページ
次へ
―本能寺― 「蘭(ラン)」 寝床につき、眠っていたはずの信長が小姓の森蘭丸(モリランマル)を呼ぶ。 「……はっ。」  蘭丸はスッと障子を開け信長の傍に寄った。 「なんの騒ぎか。馬が嘶(イナナ)いておる。」 信長の問い掛けとともに蘭丸は廊下に控える下足番に合図を出した。 「今調べて参ります故、しばらくお待ちを。」 「うむ……。蘭。具足を用意せよ。」 「はっ。」 長年の勘か、信長は戦の匂いを感じていた。 蘭丸は何一つ疑問に思わず、信長の要望に応える。 ガーン…… 突如銃声が響き、本能寺外周に一斉に明智の旗印、水色桔梗(キキョウ)が翻る。 「の、信長様!」 蘭丸の声に信長はのそっと起き上がった。
/2660ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31144人が本棚に入れています
本棚に追加