一章

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「うむ。光秀か……相も変わらず手際のよい。」 「ま、まさか光秀様が謀叛など……」 狼狽している蘭丸を尻目に信長は立ち上がり 「弓を持てぃ!」 と叫んだ。 その声に蘭丸は冷静さを取り戻したかのようだ。 「はっ。」 蘭丸が弓を取りに立ち去る。 すでに具足を身に着ける時間などない。 信長は槍を手に部屋の外へゆっくりと出ていく。 すでに戦いが始まっており、剣戟(ケンゲキ)のぶつかり合う音や悲鳴が響く。 蘭丸が弓を携え戻ってきた、と同時に本能寺境内に明智軍がなだれ込んできた。 「一番槍……グッ」 乗り込んできた兵に信長が放った矢が突き刺さる。 兵は倒れ、後続の明智兵の勢いをほんの少し緩めた。 「坊丸(ボウマル)、力丸(リキマル)、弥助(ヤスケ)、参るぞ。」
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