一章

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蘭丸は弟達と黒人武士に声を掛け明智軍に向かい刀や槍を交わし、また一方では信長の正室帰蝶(キチョウ)が女人衆を率い薙刀(ナギナタ)を振り回している。 緩めた勢いはすでに怒涛の波に飲み込まれ、各方面で乱戦となっていた。 本能寺に光秀本隊が到着したのか、明智軍の士気があがる。 信長はそれを察し大声で叫んだ。 「光秀ー!天下は……天下は主にくれてやる。儂の首、見事討ってみせい!」 光秀にその声は届いた。 (信長様……) 無言のまま軍配を振るい、本能寺に火矢を射かける。 雨のような矢が本能寺に降り注ぎ、各所で火災が発生する。 信長の肘にも矢が突き刺さった。 「ふふ。」 信長は不敵に笑い矢を抜き、弓を投げ捨てた。 「大殿、御首(ミシルシ)頂く!」 「利三か。」 斎藤利三が信長に襲いかかった。 その時、蘭丸が体ごと利三に突っ込む。 「信長様、奥へ!」
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