一章

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―天正十年六月二日未明― 夜半より降り始めた雨が次第に強さを増していた。 その雨の中、丹波(タンバ)から京へと向かう一団があった。 先頭を駆けるのは白銀の甲冑(カッチュウ)を身に纏(マト)う初老の男。上品さと知的さを併せ持ち、それでいて歴戦の古強者(フルツワモノ)を感じさせる。後に続く軍勢も統制がとれ、士気も高い。 ふと先頭の男がやや小高い丘に馬を寄せ立ち止まった。配下の武将達が続々と丘のもとへ詰め寄せ指示を待つ。 男は天を見上げ、目を閉じた。辺りは静まり返る。 ( 私は……私は間違えてはいない。ここで奴を討たねば、日本が破壊され尽くしてしまう。)
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