第二部 七章

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「謙信公が抜ければ……か」 昌豊が呟く。そして昌信と信龍に、 「そなたらも向え。城には儂が残ろう」 と、告げた。 「しかし内藤殿」 「いや、氏郷の言う通りだ。謙信公が抜けてくれねばどのみち異民族の大軍勢には抗することすら出来ぬであろう。ならば一刻も早く謙信公が司馬懿を攻略できるよう力添えするのが良かろう」 「こちらが長引いたらどうするのだ?接近されたとてすぐ戻れぬやも知れぬぞ」 「その時は籠城し、そなたらを待つのみだ」 心配そうな信龍に昌豊が微笑む。 「承知した。兵は半分連れて行くぞ」 「うむ。早急に決着をつけよ」 昌豊の意を汲んで昌信が出陣の用意に取り掛かった。 こうして翌朝。 上杉軍色部勝長、織田軍蒲生氏郷、武田軍高坂昌信、一条信龍の混成部隊が編成された。 「目指すは司馬懿を破り、謙信公を北上させることだ。敵の首は捨て置け!出陣だ」 勝長の号令で混成軍の南下が開始する。 その情報を司馬懿の間諜がすかさず報告に走る。 「北も動いたか!」 上杉本隊が動いたのは既に聞き及んでいる。狼煙が上がったため北も動くかも知れないと間諜を飛ばしていたのだ。 「許儀、典満。すぐに賈詡殿の下へ向かい指示を仰げ。対北部はまず賈詡殿に対応して頂く」 名を呼ばれたニ将が賈詡の幕舎へと急いだ。 「南は曹彰様と叔達に任せておけば良かろう」 司馬懿はさらに自軍を遊撃隊としてどちらの戦場にも向かえるよう待機させた。 「もう一手。もう一手なにかが欲しい」 司馬懿は小声で一人呟くと、深く考え込んだ。  
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