第二部 七章

1696/1731
31085人が本棚に入れています
本棚に追加
/2638ページ
「なかなか堅そうな陣形ですな」 沮鵠が呟く。 「中央の朱霊軍はこれまでの戦いぶりからして守り上手、そうそう簡単には崩さぬであろうな」 昌信が同調する。 「しかしあの孫礼という者。剛の者ですが、私を裏切り者とつけ狙っておるゆえ釣れそうですが」 「そうか、あやつが先の戦で氏郷殿を執拗に攻撃してきた者か」 「ええ。それゆえ崩すのはあそこかと」 「それで参ろう。中央は勝長殿が睨みを利かせておれば朱霊も動けまい。我らは呂虔軍を攻撃致す」 一先ずの策は決まった。中央は勝長が動きを封じ、その間に左右を切り崩していく方針である。 三人は本陣へ戻ると将を集め、偵察の報告と戦術の説明をした。その策に異を唱える者はいない。将らは翌朝から始まる大戦の綿密な策を夜が更けるまで語り合い、詰めていった。 夜が開ける。乾いた空気、雲一つない晴天。激しい戦いになりそうな雰囲気に双方の将も兵も緊張を隠せないでいた。 連合軍が配置につく。 孫礼は今度こそ氏郷の首級を上げると息を巻き、朱霊は黙して語らず。呂虔もこの戦が最後と気を引き締めて高坂軍と対峙する。 そして口火が切られる。 最初に動いたのは色部勝長。まさか最初に中軍が動くなど思いもよらず、賈詡は前軍の左右の隊を中央寄りに動かした。 その動きを見て、氏郷と高坂昌信の軍が左右陣の横合いを攻撃すべくやや膨らみ気味に行軍を開始する。 賈詡はさらに後軍の左右の隊を上げて防御力を高めた。 「流石は名軍師。対策が早いな。だが想定内だ。沮鵠殿。作戦通りに」
/2638ページ

最初のコメントを投稿しよう!