第二部 七章

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孫礼の騎馬隊が、氏郷の騎馬隊の後方を防ぐべく弧を描く。 「ここで動くか。残る騎馬隊は私について参れ。槍隊も後に続け」 氏郷も精兵を連れて進軍する。その様子は孫礼からは見えない。 旋回する孫礼騎馬隊を奇襲する形で氏郷が突っ込んで行った。 「敵将がいるぞ!討て」 その一言で孫礼騎馬隊は本来の任務である敵騎馬隊の後方を攻撃することを止め、氏郷に矛先を向ける。 「槍衾を展開させておけ。程良いところまで下がるぞ」 前線へ辿り着いた槍兵が、次々と槍を突き出した塊を作り出していく。 氏郷は孫礼騎馬隊を引き付けてから精兵部隊を左右に分け、自身は槍衾の前で待ち構えた。 そこへ孫礼騎馬隊が殺到する。待ち構える氏郷に何らかの策略を感じたのか騎馬隊は自然に止まった。 「さすがは腑抜けの将の兵どもよ。私一人が怖くてかかってこれぬのだからな」 氏郷はそう言うと高笑いして挑発する。 「そのような手には乗らぬわ!」 騎馬隊の兵長が言い返す。 「ほう、冷静だな。だが、良いのか?」 「なんのことだ?」 「そなたの後ろには我が騎馬隊がいるはずだが忘れたか」 兵長が振り返る。騎馬隊がこちらへ向かって来ているのが見える。それも突撃並の勢いだ。 「降るならば命は救けよう、武器を捨てよ」 兵長は逃げる道がないか左右を確認するが氏郷の精兵が塞いでいる。前方には氏郷と槍衾。 「降るか。そなたの首を穫れば良いだけの話」 兵長は騎馬隊に攻撃を命じた。せめて氏郷を道連れにとばかりに死にものぐるいで向かってくる。
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