第二部 七章

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高坂軍動くの報は呂虔軍からすぐに許儀軍と本陣の賈詡へと伝えられた。 「両翼の敵軍はどちらも攻めにくそうであるな」 賈詡はほくそ笑む。典満や許儀から釣り出そうとするのは攻めあぐねている証拠だろう。 「許儀に、賈訪隊を送る。高坂を油断させてから夜襲をせよと。夜襲がうまくいったら呂虔軍は眼前の武田軍に、許儀と賈訪はそのまま追撃だ」 賈詡は両軍への命令を終えるとすぐに別の早馬を二人呼び付け、 「朱霊に、指示があり次第全力で侵攻。その時はこちらも進軍致すと。また孫礼に朱霊軍が動き次第、典満軍と賈穆軍と共に氏郷を攻撃せよと」 賈詡は高坂軍の崩しから一気に戦局を動かすべく仕掛けることとした。 うまく嵌まれば、高坂軍の崩壊から武田軍を崩し、救援に向かおうが向かうまいが朱霊と賈詡本隊が上杉を、また同様に孫礼らが氏郷と、と奇襲または各個撃破の形ができる。 「ふん、この戦は我が最後の戦。言わば集大成よ。必ず勝つぞ」 高齢の賈詡はこの戦を生涯最後と決め、必勝を天に向かって誓った。 「賈詡本隊から別の部隊が許儀と合流したと?」 昌信からの使者である。昌信は状況を全将と共有すべく早馬を派遣していた。もちろん氏郷にもだ。 「固く守るにしても違和感があるな」 孫礼は相変わらず動かないし、典満も一旦は釣りだしたがまた元の位置に戻って賈穆と合流してしまい、沮鵠が挑発していても動きが見られないでいた。 この状況で自分が敵軍師ならどこを狙うか、氏郷は目を閉じて想像する。
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