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「そろそろ始めるか」
半刻ほどして昌信は起き上がった。氏郷が戻り着いてもおかしくない時間だろう。
「皆、適度にだらけておるか?」
「はい、地べたに座り込んで談笑したり、寝そべったりしておりますが」
「うむ、もう一押しするか。瓶に水を入れ皆に酒だと振る舞え。兵どもには酔った振りをせよと。上手くできた者には褒美を渡そう」
昌信の下知に兵たちは挙って酔った演技をしてみせた。ぐだを巻く者、歌う者、うたた寝する者など十人十色である。
「何!?酒盛りをしておるだと?」
許儀は耳を疑った。戦の最中、それも最前線で酒宴など前代未聞である。
と、同時に激昂した。眼の前で酒宴など馬鹿にするにも程があろう。
それでも許儀は攻撃せずにまずは賈訪と相談し偵察を出し現状の確認に向かわせた。賈詡にも早馬を出している。
「罠くさいな。しかし本当なら千載一遇の好機であるぞ。みすみす逃すのはもったいない」
「ではどうする?」
「許儀殿の一隊をぶつけて出方を窺うのはどうであろう。罠ならすぐ引き返せば良いし、そうでなければ追撃すれば大きな戦功を得られよう」
「流石は名軍師賈詡殿の子であるな。ではそのように致そう」
許儀は偵察隊に攻撃してみよ、と命じた。
指示を受けた偵察隊が攻撃を開始する。偵察隊の攻撃に昌信軍が慌てふためく。
「これは賈訪殿が当たりのようだ。許儀軍進軍開始」.
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気を良くした許儀は敵は本当に酔っていると思い込み兵を動かした。
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