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「酷い目に遭ったわ」
ようやく落ち着いた先で賈訪が愚痴をこぼした。許儀はばつの悪そうな顔で押し黙っている。
「これではまた父に叱られてしまうではないか。貴殿の失態であるぞ」
賈訪は敗戦の責任を押し付けると、さっさと本陣へ退くべく軍を動かした。
だがそこへまたしても高坂軍が現れる。
「なぜこうも行く先々で奴らに遭遇するのだ」
だが敵の数は明らかに少ない。それを見て賈訪は撤退せずに応戦するよう指示を出した。
「ほう、勇敢だな」
「なに!高坂昌信がいるだと?ここで奴を討ち取れば挽回できるぞ、やれ!」
寡兵と侮り、賈訪が仕掛ける。しかし相手は歴戦の勇であり、張遼を討った男である。賈訪がとても敵う相手ではなかった。
「賈訪と言ったか、勇敢と無謀は違うぞ」
高坂軍の熾烈な攻撃に、賈訪は撤退する隙すら見つけられない。そこへ、
「賈訪殿、ここは某が引き受けた。撤退されよ」
と、許儀が割って入った。
「おお、助かったぞ。頼む!これで先の失態はなかったこととしよう」
そう言って賈訪は這々の体で逃げて行く。
「逃がす価値のある奴とも思えんが」
昌信が許儀に斬りかかる。許儀はそれを撃ち返し、
「だとしても味方、助けぬわけにはいくまい」
と、言い返す。
「仲間思いも結構だが、相手と状況を考えればここは逃げるが最善手であったな。そこがお主の甘さよ」
昌信の猛撃に許儀は押しに押され、遂には敗れて捕縛されてしまった。
「先も奴に言ったが勇敢と無謀は違うのだ」
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