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同じ頃。
どこへ向かっているのかはわからないがひたすら賈訪は逃げていた。
雪辱どころか恥の上塗りであり、父の賈詡に合わせる顔もない。
「くそ、許儀め」
賈訪は許儀を悪しざまに呟き、どのように告げ口してやろうかと邪なことを思索していた。
すると、突然前を走る兵たちが立ち止まった。
「なんだ?」
賈訪が前方を注視する。そこには部隊が展開していた。
「賈訪殿とお見受けいたすが間違いござらんか?」
「何者か?」
「某、武田麾下の一条信龍と申す」
「武田だと!なぜここへ」
「やはり気づかなかったか。高坂殿の策により誘導されておったのを」
「誘導だと!?」
「如何にも。そして誘導されてここへ来て某が目の前に現れたという事は、これ以上もはや逃げること敵わぬということ」
「降伏せよと?」
「出来れば。どうしても戦いたいとあらば手を抜かず殲滅するまで 」
細かな表情まではわからないが、話し方や声の強さから、とても嘘や脅しとは思えない。
「皆武器を捨てよ」
賈訪はあっさりと諦めて、自ら武器を手放し跪いた。それに倣い、兵たちも皆武器を捨てて降伏した。
「降ったか。捕虜は南皮に送れ。信龍が合流し次第朱霊を攻める。友軍にそのように伝えよ」
昌信が次々と指示をだす。氏郷の助言があったとはいえ、賈詡の策を乗っ取り追い詰めていくことに優越感を覚えていた。
氏郷の下にも昌信の使者がやってきた。
「なんだと!高坂殿はやりすぎであるな」
使者は驚いた。氏郷の反応が自分が思っていたのとは違ったのだ。
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