一章

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様々な想いが蘇る。家中随一の知識を携え、その功績から今や家中に並ぶ者なく、主からの信頼も篤い。 (……しかし。) やや優柔不断な面もある。 「……殿。」 家臣の斎藤利三(サイトウトシミツ)が声を掛けた。 「うむ……。」 明智光秀(アケチミツヒデ)は一呼吸おき、目を見開いた。 「我らは……我らはこれより、洛中(ラクチュウ)へ進路をとる。……狙うは覇王の首!信長(ノブナガ)の首じゃあ。敵は本能寺(ホンノウジ)にあり!」 一瞬の沈黙の後、喚声が上がった。さすがに光秀にも不安はあった。だが離反する者はない。続けざまに光秀は言い放った。 「秀満(ヒデミツ)と光忠(ミツタダ)はこれより別働隊となり、妙覚寺(ミョウカクジ)の信忠(ノブタダ)を襲撃せよ!利三は本隊先陣を率い、本能寺を包囲せよ!」
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