第二部 一章

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「おぉ、利三か」 「相変わらず浮かぬ顔をしておるな」 ようやく気づいた秀満を気遣い、いたわるように話しかけた。 「……」 「殿のことか?」 「いかにも。利三殿は現在の状況に満足しておるのか?」 「某は殿を信じ付いていくのみ」 「そうか……」 二人が静かに話していると、すぐそばを急使が馬を飛ばして駆け抜けていった。 「何事かな?」 秀満は利三と顔を見合わすと、すぐに後を追った。 城の軍議場にはすでに主だった武将たちが集まり、孫権の登壇を待っていた。 その間、武将たちは口々にいろんな噂話を喋りだしては、否定し、あるいは肯定し、と言葉を酌み交わしている。 秀満と利三は耳を傾けるだけで参加はせず、光秀の姿を探しだし、近づいていく。 「殿」 「二人とも来ていたか」 「はっ、して先の早馬は?」 「まだわからぬが、官渡を偵察していた者共らしい。決着がついたのであろう、というのが大方の意見だな」 「官渡……曹操が勝った合戦ですな」
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