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「呂蒙よ、ひとつ気になったことがあるのだが?」
秀満が立ち去った後、周瑜が光秀に問いただした。
「は。なんでしょうか?」
「秀満が信長の軍に潜入すると犬死にするとはどういうことかな?」
全く、油断も隙もない。
光秀は内心で苦笑しつつ、怪しまれないようにすっきりとした話し方で返答した。
「秀満の親族が謀叛の首謀者であったと聞いていたので」
「なんと。それでは確かに秀満の身が危ういな」
「止めて参ります」
「いや、待て」
秀満を止めようと身を翻した光秀を周瑜が押し留めた。
その眼は光秀ではなく宙を見つめている。
そして静かに続きを話しだした。
「あれだけ自信を持って言い切ったからには何かしら策があるのであろう、やらせてみよ」
「し、しかし!」
「失敗したとて我らに何ら支障はない。むしろ次の間者を潜り込ませやすくなるやもしれぬ」
光秀は周瑜の冷徹な部分を垣間見た。
なるほど、大国の宰相ともなれば冷静に状況を判断し、指示を下し、時には部下を見捨てる決断も必要だろう。
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