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「どうした、ではない。信長公の下へ向かったら命はないぞ」
いつもは寡黙な利三の饒舌ぶりに秀満は驚き、ふいに笑みがこぼれた。
「かもしれんなぁ。だがそうでないかもしれぬし、信長公ではない別人かもしれんな」
などと、のらりくらりと受け答え、ひと息おくと表情を引き締め、
「なあ利三……義父上は変わったな」
と、呟いた。
「うむ、呂蒙殿と孫策殿のことが大きいのだろう。我らに心中を語ることもなくなったな」
二人は互いに沈みこむ。
部下や領民を第一に考えていた以前の光秀の面影は薄く、呂蒙になりきりすぎているように感じてられた。
「利三、義父上のこと頼むぞ。私は信長公にお会いして参る。例え殺されたとて、すでに一度死んだ身だ、なんの悔いもない」
秀満は利三の手を取り、後事を託した。
「うむ、任せろ。道中気をつけてな」
利三は旅立つ秀満の後ろ姿を見送った。
今生の別れではないだろうが、秀満はもう光秀の下へ戻らない、そんな気がしていた。
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