第二部 二章

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秀満が徐州にたどり着いたのは、出立してから約三カ月後であった。 それほどゆっくりと歩いてきたわけではないのだが、悠久とも思える長江の川べりを最初は西へ向かい許都を目指したのだが、どうも民の噂になっている武将が信長のことらしい。 秀満は信長の足跡に興味を抱き、思い直して再度東へと向かって、渡河した。 徐州が近づくにつれ、信長のはっきりとした話題が囁かれだした。 関羽を降した戦や北海での戦、官渡での信長軍の働きなど、枚挙に暇がない。 やがて徐州の彭に到着すると、信長の話もさることながら、信長の妻の話題も増えた。 どうやらいまだに彭城内に住んでいるらしい。 (信長公の妻、濃様かな) と、城へと歩みを早める。 当然ながら、城内へ入る前に門衛に呼び止められた。 秀満は身分を偽ることなく、 「私は濃様の旧知、明智秀満と申す。濃様にお取り次ぎ願いたいのだが」 と、用件を伝えた。 城兵はすぐさま濃姫に使いを送り、対処を尋ねた。
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