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新野城では曹操の大軍が迫っての撤退をするわけでもないのに、将兵から民・商人までが慌ただしく動いていた。
「迎撃か」
半兵衛が誰に話しかけるでもなく呟く。
その脳裡では諸葛亮の策を読むべく、諸葛亮になりきったつもりで迎撃の方法を探っていた。
信長と道三はそんな半兵衛をほうっておき、蜘蛛の巣のように緻密に張り巡らしてある斥候から、次々もたらされる情報を吟味する。
基本的には曹操から依頼されようと新野攻めに参加するつもりは毛頭ない。
仮に攻撃に加わり、新野を降してこの地を得た所で全く旨味がないためである。
「ほう」
「そうか」
道三と半兵衛がほぼ同時に声を上げた。
「半兵衛、読めたか?」
信長が半兵衛を手招く。
「はい、恐らくは空城の計。諸葛亮が得意とする策ですな」
「とのことだが、いかがかな舅殿」
信長は視線を道三に移す。
「空の城に敵をおびき入れ殲滅する策か。間違いあるまい。枯れ木や枯れ草がいやに運びこまれておるわい」
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