第二部 七章

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他にも油を仕入れていたり、住民が荷をまとめながらも未だ逃げ出す気配がないことも策の証左であった。 「新野を捨てるにしてもただでは捨てんということか」 「曹操殿に伝えますか?」 半兵衛が信長に問う。 「いや。伝えずとも良い。簡単に荊州を落とされても困るゆえな」 新野を抜けばすぐに州都襄陽に達する。 それなりの抵抗はあっても最終的には曹操が勝つであろうが、その前に領地を切り取っておかねば信長の荊州侵攻は無為になる。 「とはいえ、このまま新野近くに留まっていても曹操の援軍に駆り出されよう」 曹操の姑息な手口には慣れたと言わんばかりに悪態をついた。 援軍にかこつけ、思うように信長が勢力を広げる隙を与えないことに嫌気が差していた。 だが、表立って曹操と敵対できる戦力も持ち合わせていない。 そこで、この人口も在野の士も豊富な荊州に拠点を築き、曹操に対抗する戦力を蓄えようと信長は考えていた。
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