第二部 七章

7/1746
前へ
/2653ページ
次へ
旗には曹の文字が描かれている。 「曹仁らが来たな。後世にまで名が響き渡る天才諸葛孔明の戦、しかと目に焼き付けようぞ」 信長は物見遊山にでも行くかのように気楽な態度で半兵衛に笑いかけた。 対して半兵衛は些細な物事も見落とさないようじっと目をこらす。 まるで信長の言葉など耳に入らないかのような集中力であった。 やがて曹仁・曹洪が城前に展開する。 城内に人の気配は感じるがこれといって攻撃をしてくるわけでもない。 曹洪が攻めようと曹仁に持ちかけるが、曹仁は先の敗北からか容易に攻めるのは危険だ、と曹洪をなだめる。 そうしている内に、城郭に二人の人物が姿を現した。 劉備と孔明である。 「曹仁殿、何度も敗れても懲りずに良くぞ参られた。だが痛い目にあいたくなくば、曹操殿と共に許へ引き返したまえ」 劉備は特段弁が立つわけではないが、その口から発する言葉や話し方などのたたずまいには人々を心酔させる力が秘められていて、曹軍兵士らは黙って聞き入っていた。
/2653ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31128人が本棚に入れています
本棚に追加