第二部 七章

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だが劉備と同等、もしくはそれ以上の英雄である曹操と常に接している曹仁は簡単にたぶらかされない。 「各地で無闇に乱を起こし、漢の天下を揺るがそうとする逆賊が何を言うか」 劉備は孔明の顔を見やり、腹を抱えて笑い転げ、また孔明は羽扇にて口元を隠しつつ笑む。 「何がおかしい!」 その劉備主従の態度に曹洪が腹を立ててなじる。 「漢帝を楯に敵対する者を逆賊と罵り、またその威光を笠に天下を牛耳らんとする曹操こそ真の逆賊ではないか」 劉備の反論に曹洪の血管が切れそうなほど浮き出、あまりの怒りにわなわなと身を震わせた。 「もう我慢ならん!」 曹洪は曹仁の制止も聞かず、弓を構え、単騎城郭へと攻め寄せた。 曹仁としても曹洪をむざむざ殺させるわけにもいかず、全軍に進撃の合図を送る。 「掛かりましたな。後は手はず通りに」 相変わらず口元を隠したまま、孔明が劉備を促した。 劉備と孔明は曹洪の弓が届くほど近くまで到達すると、城内に身を隠す。
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