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「逃げ足だけは英雄だな」
などと曹洪が罵詈雑言を繰り返すが、新野城は全くの無反応であった。
後続の曹仁軍が城門を攻撃する。
城門はさほど苦労もなく破壊され、そこから兵とともに曹仁・曹洪も雪崩込んだ。
「人の気配がない」
曹仁は顔をしかめ左右正面を注意深く見回した。
「恐れを為して早々に逃げ去ったのではないか?」
曹洪の返答に曹仁は否、っと怒鳴りつけた。
「しまった!罠だ、退け、退けぃ」
曹仁が取り乱して退却を告げる。
だが城門から雪崩れ込む兵らの勢いが勝り、退くことができない。
「罠だと?」
軍師を得た劉備軍の強さを肌で体験していない曹洪は、劉備を軽んじ、無名の諸葛亮を甘く見ていた。
そこへ、ヒュンと風を切る炎の矢が降り注ぐ。
矢は油を仕込んである家屋や枯れ草に突き刺さり、一斉に燃え広がっていく。
「他の城門に向かえ!」
曹仁の指示により、部隊の一部は散開し、東西と南の城門の様子を窺いにいく。
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