第二部 七章

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「逃げ足だけは英雄だな」 などと曹洪が罵詈雑言を繰り返すが、新野城は全くの無反応であった。 後続の曹仁軍が城門を攻撃する。 城門はさほど苦労もなく破壊され、そこから兵とともに曹仁・曹洪も雪崩込んだ。 「人の気配がない」 曹仁は顔をしかめ左右正面を注意深く見回した。 「恐れを為して早々に逃げ去ったのではないか?」 曹洪の返答に曹仁は否、っと怒鳴りつけた。 「しまった!罠だ、退け、退けぃ」 曹仁が取り乱して退却を告げる。 だが城門から雪崩れ込む兵らの勢いが勝り、退くことができない。 「罠だと?」 軍師を得た劉備軍の強さを肌で体験していない曹洪は、劉備を軽んじ、無名の諸葛亮を甘く見ていた。 そこへ、ヒュンと風を切る炎の矢が降り注ぐ。 矢は油を仕込んである家屋や枯れ草に突き刺さり、一斉に燃え広がっていく。 「他の城門に向かえ!」 曹仁の指示により、部隊の一部は散開し、東西と南の城門の様子を窺いにいく。
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