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曹洪が趙雲の挑発に乗り飛び出そうとする所を曹仁は腕で制した。
「退かせてもらうとしよう」
曹仁の返答に曹洪が憤慨する。
曹仁とてはらわたが煮え繰りかえる思いであった。
だが、すでに劉備と諸葛亮は戦線を離脱しており、また新野城もこの燃え具合では再建は不可能。
得るものは何もなく無駄に多数の兵を失うだけの結果に終わっては、今度こそ曹操に愛想を尽かされてしまう。
「さすがは曹仁殿。賢明な判断だ」
趙雲はそう言うと槍を納め、兵に戦闘の中止を命じた。
「かたじけない」
兵をまとめた曹仁は曹洪に兵を率いさせ、自らは殿軍として最後まで残っていた。
最後の部隊が進軍を開始すると、曹仁は趙雲に礼を述べた。
内心忸怩たるものがあるのをひた隠し、兵たちに紛れて曹仁は帰陣した。
曹仁の敗報と新野の焼失は瞬く間に曹操本陣へと伝わった。
だがそれ以上に大きな、それも喜ばしい知らせが曹操に届いており、敗報をも忘れるほどであった。
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