第二部 七章

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「我が主劉ソウ様は聡明なお方で、此度は荊州を上げて曹丞相に降ることを決断なされました」 曹操はすっかり満悦し、劉ソウの使者である韓嵩をもてなした。 「ところで韓嵩よ。カイ越は達者であるか?」 曹操は尚更嬉しそうな笑顔を浮かべ尋ねた。 「は。健勝にございます」 それを聞き、曹操は何度もうんうん、と頷いている。 「なぜカイ越殿を?」 韓嵩は同僚であり、共に劉ソウに降伏を説いたカイ越が曹操に目を掛けられているようで、心奥でわずかながら敵愾心が沸き起こっていた。 それを微かに感じ取ったのか、曹操の表情が一変する。 「カイ越が智者であることはおぬしも知っておろう。儂は優れた人材を何よりも好む。荊州を得たことよりもカイ越を得たことの方が喜ばしいのだ」 言葉も話し方もきつくなり、韓嵩は思いもよらぬ所で怒りを買ってしまった、と縮こまった。
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