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命令通り、信澄や弥助は信忠隊への伝言を携え、馬を急がせた。
信長は信澄らが発つとすぐ曹操本隊へと向かう。
「おう、信長ではないか。いかがいたした?」
曹操は意地の悪そうな顔をにやけさせる。
「ふん、荊州陥落の祝辞に参ったまでよ」
信長は鼻を鳴らし、わざとらしく素知らぬ顔をする曹操に投げつけるように言葉を返す。
「そうか、わざわざすまんな。して領地は切り取れたか?」
曹操は更に信長を煽ろうと戯れるが、信長はただ首を横に振るのみであった。
「地を得ることはできなかったか」
曹操はまたも知らぬ顔をしたが、次の一瞬辺りも凍るような殺気を放った。
「劉備といい、おぬしといい、英傑が拠るべき土地を持てぬとは不憫よのう」
その話し方からは抑圧と共に、欲しくば奪ってみよ、という挑発も感じ取れる。
信長は挑発に乗りそうな所を懸命に堪えた。
「それよりも曹操、おぬしに渡したいものがあるのだが」
信長は声色をいつものように装うと、部下を呼び寄せる。
「これは不如帰という鳥だ。縁起物ゆえ持参致した」
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