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信長の部隊が出立すると、すぐ後方を虎豹騎の部隊がついてくる。
「目付役か。よほど儂の動きが気になるようだな」
信長が併走する半兵衛に呆れ顔を見せる。
「ほうっておけないほどの勢力と見なされたのでしょう」
半兵衛が冷静に曹操の心境を分析してみせた。
「ふん、煩わしいがまだ曹操の思うように動いてやるわ。機はまだ熟しておらぬゆえな」
「不如帰と鶯の喩えですな」
半兵衛は信長の顔を見てにやりと笑みを浮かべる。
信長も同じように頬を歪めて半兵衛を見返した。
「もう少しばかり鶯に育ててもらうとしよう」
信長はそう言うと、騎馬の速度をぐんぐんと上げていった。
やがて信長隊の前方に夏侯惇と張遼の後方部隊が見えはじめ、あっさりと追いつく。
「随分とゆっくりした進軍だな。これでは劉備に追いつかぬのではないか?」
信長の疑問はもっともであった。
「いえ。劉備が民衆を率いての行軍をしているのです。いくら劉備に付随しているとはいえ、民衆をやたらと殺すような下策は取りますまい」
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