第二部 七章

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「雲長殿、忙しいところすまぬ、ちとばかり話があるのじゃが」 あまりにも無防備で近づいてくるので、城兵も様子を見るだけで咎めず、容易に江夏城下へと道三は到達することができた。 城下で道三が発した声は老人のものとは到底思えぬほど力強く生き生きとしていた。 その声に反応し、城門上に関羽が姿を現す。 「やあ、利政。息災であるか?」 「見ての通りですわい」 道三が懐かしそうな眼差しで関羽を見つめていたこともあり、関羽は警戒心を解き道三を城内へ招き入れた。 「それほどゆるりとはしていれんのだ。すまんな」 関羽は道三に会うなり肩をぽんぽんと叩く。 「ならば先に要件から入ろうかの。雲長殿、この城の留守我らに任せぬか?」 あまりにも唐突な意見に関羽は言葉が出ない。 そして耄碌したのではないかと道三の顔を覗き込んだ。 道三もそれを感じ取ったのかにこりと微笑み、 「なにも我ら織田の者がこの地を占領するわけではない。曹操からの侵略を防ぎ、また劉備殿の退路を確保する。そのためじゃよ」
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