第二部 七章

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民衆たちの叫び声は信長らにまで届いていた。 宗教を楯に叛乱を幾度繰り返す農民らを根こそぎ殺した長島の合戦が脳裏をよぎる。 「いつの時代も民が犠牲になるのは変わらんのだな」 信長にしては感傷的であり、今まで見たことのない面を垣間見た半兵衛は無言で驚く。 だが次には普段の信長に戻っており、 「半兵衛、曹純が血路を開いたようだ。我らも行くぞ」 と、進軍の命を下した。 信長が蘭丸を脇に先頭を走る。 怯えた表情で信長らを見る民衆や、罵詈雑言や恨み辛みを吐く者共を後目に、信長は曹純の切り開いた道を突き進む。 溜め込んでいた鬱憤を晴らすかのように、劉備の兵はよってたかってなぶり殺されており、その凄まじさには蘭丸ですら戦慄を覚える。 ほどなく進むと一際大きな喚声が前方から沸き起こった。 信長はその喚声のする方へと急行する。 そこでは曹操軍の兵卒十数人が劉備軍の文官を取り囲んでいた。 兵たちの目は血走り、狂っているように言葉にならない声を発している。
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