第二部 七章

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いかに趙雲と言えども、餌を前にした蟻のようにわらわらと集まる兵共を相手にしては切りがなく先に進めない。 趙雲は白い毛並みの愛馬に跨り、自らの道を遮る者のみを薙ぎ倒していった。 それでも兵は兵を、または将を呼ぶ。 趙雲を追いかけてくる雑兵の数は急激に増えだし、その中には士官もいる。 このままでは劉備夫人を見つけても助け出せぬと、趙雲は曹兵の群に馬首を返して飛び込んだ。 怒りに身を任せた趙雲の反撃は凄まじく、曹軍は屍の山を幾つも築くこととなった。 白馬も鮮血を浴びて、全身と言っていいほど赤く染まっている。 趙雲の鬼神の如き戦いぶりは恩賞目当ての軽い気持ちの曹兵の戦意を挫き、遂に大半が逃げ始めた。 だが曹操に仕えて間もない戦功に逸る将は恐れることなく趙雲に挑む。 「我は張南!趙雲の首とならば列候に取り立てられようぞ」 張南は旧袁煕配下であり、旧主敗走時に曹操に寝返ったが、以来なんの功績もないため此度の戦で大功を求めていた。
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