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小屋は朽ちかけ傾き、所々壁が崩れていた。
幸い、この非常時にも拘わらず阿斗はぐっすりと眠っている。
「奥方様、もう少し息を潜めていてくだされ。ちょっとばかり外の様子を見て参ります」
徐庶の囁きに糜夫人は黙って頷いた。
徐庶は崩れ落ちた隙間から外に敵兵がいないか確認し、また入口の扉を少し開いて再び確認する。
敵兵は見当たらず、徐庶は音を立てないようにそろりと外へと出た。
最大限に警戒しつつ小屋の周りをぐるりと一周する。
方々で戦の喚声や民衆や兵の悲鳴は聞こえる。
小屋から少し離れ、見通しの良い整備された道へと足を向けた。
すると馬蹄の地を蹴る音が、地を揺らしながら聞こえてきた。
慌てて草むらに飛び込み、馬蹄の正体を確かめようと目を見張る。
「民衆からの情報だとこの辺りに逃げたようだ。隈無く探せ」
絢爛な武装を纏い、高貴な雰囲気を醸し出す見目麗しい若武者が一隊を率いていた。
曹旗を掲げているので曹操の配下であることは間違いない。
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