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「わかった。母に会いに戻ろう。そして望み通り曹操様にお仕えしよう。さあ曹丞相の下へ連れて行ってくれ」
徐庶は襟を正して、慇懃に若武者に訴えかけた。
「それは朗報ですな。だが我々はこの辺りをまだ捜索しなければならないのだ」
若武者は頑としてその場を離れようとしない。
「徐庶殿を本陣へお送りせよ。他は捜索を続行だ」
徐庶は若武者の部下に体を抑えられ、引きずるように連れ去られようとしていた。
「夏侯恩将軍、小屋がありますぞ」
「そうか、徐庶殿はここを隠していたのか。何かあるぞ、隈無く探せ」
夏侯恩は曹操の寵愛に応えるべく、相応しい功績を得ようと目論んでいた。
やがて夏侯恩隊の兵が糜夫人と阿斗を発見した。
「これは丞相も喜んでくれよう」
夏侯恩はほくそ笑み、夫人と赤子を連れ帰還しようとしたその時。
馬の嘶きが響き、一陣の風と共に一騎の将が立ちはだかった。
「夫人と赤子は返してもらうぞ」
修羅の如き形相、全身に帯びた返り血。
「趙子龍参る」
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