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刀身は透き通るように青白く、赤い血を求めるがごとく輝く。
これは名剣である、と趙雲は剣を履き、虫の息の夏侯恩から鞘を奪った。
そして糜夫人の下へ駆け寄る。
糜夫人は阿斗をしっかりと抱きしめており、身を挺して守っていた。
「趙雲殿……」
糜夫人を揺り起こすと、夫人は目を開き、眼前にある頼もしい人物の顔に涙した。
「和子を頼みます」
しっかりと阿斗をかばっていた手を外し、抱き上げて趙雲へと託した。
「何を仰います。さあ肩をお貸しいたします」
趙雲は阿斗を受け取ると胸元にしっかりと結び付け、糜夫人を起き上がらせようと抱えた。
すると夫人が呻き、顔を苦痛に歪める。
見ると、夫人のふくらはぎの辺りが真っ赤に染まっている。
「趙雲殿、ご覧の通り。私は貴殿らの足手まといにしかなりません。どうか私に構わず和子を玄徳様に」
夫人の決死の懇願に趙雲はたじろいだ。
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