第二部 七章

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その手のひらには切り傷があり、鮮血が流れでていた。 「口が過ぎるのが徒となったな。矢に毒など言わねば今頃は……」 趙雲が全て語り終える前に、淳于導は息絶えていた。 だが痛みをもって毒を制したが、排除されたわけではない。 趙雲の手足は徐々に痺れはじめる。 そこへ折り悪く、淳の旗を掲げた部隊が現れた。 兵らは目の前に倒れている淳于導の死体を見て復讐に燃えた。 曹操から下賜された淳于導隊の精兵たちは、誰一人として逃げることなく、殺気を剥き出しにし趙雲に対して武器を構えた。 本来ならば胸に守るべき命が眠っている以上、この多人数を相手に戦っている場合ではない。 それに糜夫人も趙雲の後方にいる。 趙雲は今の状態では馬を操ることも難しい、と自覚し武器を持つ痺れた手に力を込めた。 淳于導の兵が一斉に趙雲に襲いかかる。 その時、数多の空気を切り裂く音が趙雲の後方から突き抜けていった。
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