31146人が本棚に入れています
本棚に追加
だが黒装束の集団は警戒を解かない。
「まだ来るか?」
集団を纏めているらしき男がこくりと頷き、隣にいる者に目で合図をする。
合図を出された者は人間離れした跳躍をし、あっという間に姿を消した。
緊張感が漂う中、先ほどの男が音もなく帰還し、老人に報告をする。
「なに?……信長だと?」
微かな声の中に信長という名を耳にした趙雲が老人に詰め寄り、信長のことを知っているのかと尋ねた。
「奴は我々の仇敵。決して忘れることなどできん」
悲壮さの中にも鬼気迫るものを感じ、それは趙雲の肌をざわつかすほどであった。
「さて、そろそろおぬしの体も大丈夫じゃろう。皆の者、退くぞ」
老人の命令に黒装束の者たちが姿を消す。
「お待ちくだされ!」
趙雲はまだ礼もしておらぬと、老人を引き止めたがいつの間にかその姿は見えなくなっていた。
それからほどなく、信長隊の兵が趙雲らの前に現れた。
最初のコメントを投稿しよう!