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「生きておったか」
信長は、趙雲を目にすると開口一番に鼻で笑う素振りを見せ、安堵した本心を隠す。
「私と阿斗様は無事ですが奥方様の傷が深く……」
趙雲の無念の思いが顔に浮かぶ。
「さすがは忠義の臣よ。自らの命を投げ捨ててでも夫人と赤子の命は守ろうとするか」
「それが臣下の務め」
「まあ良い。趙雲、夫人と赤子は儂が預かり落ち着いたら劉備に送り届けよう」
「しかし……」
「しかしではない。この先十数万という規模の曹軍が展開しておる。いくらおぬしが万夫不当の勇士とて、とても怪我人を守りつつ切り抜けられるものではない」
信長は叱責するかのような強い口調で趙雲を説得する。
趙雲は渋々ながら説得に応じ、糜夫人のみを信長に預けることとした。
「阿斗様は殿の跡取り。たとえ信長殿とてお任せするわけにはいかぬ」
頑として聞かない趙雲に、信長も半ば呆れ顔であり、苦笑するしかなかった。
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