第二部 七章

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趙雲はくれぐれも夫人を宜しくと頼むと、愛馬に跨り、曹軍ひしめく戦場へと姿を消した。 「趙雲殿に護衛をつけなくても?」 信長の部下が心配そうに尋ねた。 「なあに、姿は現さぬだけでしっかり護衛が付いておるわ。それも腕利きの者らがな」 怪訝そうな表情の部下に、信長は曹軍兵の死体を指差した。 「これは……!まさか伊賀の?」 信長は黙って頷き、糜夫人を丁重に馬に乗せ自陣へと戻っていった。 趙雲が曹軍真っ只中を突き抜ける。 今まで多くの合戦を経験して、たくさんの人を斬ってきたが、その累計を越えるほどの曹軍兵を斬り殺しているかのような気さえする。 疲労などとうに限界を越え、劉備の下に阿斗を無事送り届ける、ただそれだけが趙雲を支える唯一の気力となっていた。 「この軍勢を単騎で突破しているだと?」 趙雲の勇戦が曹操の耳に届く。 曹操はその勇士に強い興味を抱き、自らの目で確認すべく馬に跨る。
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