第二部 七章

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「あれが趙雲か……」 曹操は趙雲の剣舞のような動きに見とれた。 そして無意識に、 「欲しい」 と、呟く。 また悪い癖が出たかと夏侯惇は顔を覆った。 「孟徳、趙雲一人にどれほどの損害が出ているかわかるか?」 夏侯惇は配下がいるにも関わらず、つい感情的に曹操を咎めた。 「それほどか?」 曹操の目は趙雲を捉えて離さない。 「孟徳が目をかけ育てた若い奴らは大概逝った。淳于導、晏明、鐘縉、鐘紳それに恩もだ」 「何?夏侯恩もだと?」 これにはさすがに曹操も一旦趙雲から視線を外し、夏侯惇に目を向けた。 「そうだ。趙雲の持つ刀、腰の鞘をよく見てみよ」 曹操は言われるがままに趙雲の手元を目を凝らして見た。 刀は血塗られて鍔も遠目ではっきりとは判別できない。 だが腰の鞘は紛れもなく青コウの剣のものであった。 それでも不思議と怒りは沸いてこない。 それほど趙雲に魅せられているのだろう、ついに曹操は趙雲を殺してはならぬ、と命をだした。
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