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「あれが趙雲か……」
曹操は趙雲の剣舞のような動きに見とれた。
そして無意識に、
「欲しい」
と、呟く。
また悪い癖が出たかと夏侯惇は顔を覆った。
「孟徳、趙雲一人にどれほどの損害が出ているかわかるか?」
夏侯惇は配下がいるにも関わらず、つい感情的に曹操を咎めた。
「それほどか?」
曹操の目は趙雲を捉えて離さない。
「孟徳が目をかけ育てた若い奴らは大概逝った。淳于導、晏明、鐘縉、鐘紳それに恩もだ」
「何?夏侯恩もだと?」
これにはさすがに曹操も一旦趙雲から視線を外し、夏侯惇に目を向けた。
「そうだ。趙雲の持つ刀、腰の鞘をよく見てみよ」
曹操は言われるがままに趙雲の手元を目を凝らして見た。
刀は血塗られて鍔も遠目ではっきりとは判別できない。
だが腰の鞘は紛れもなく青コウの剣のものであった。
それでも不思議と怒りは沸いてこない。
それほど趙雲に魅せられているのだろう、ついに曹操は趙雲を殺してはならぬ、と命をだした。
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