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「あれほどの手練れを生け捕りにしろだと!」
夏侯惇は強く反論したが曹操は全く聞き入れない。
「弓を使わず、幾重にも囲い、疲れた所を捕らえれば良かろう」
こうなってしまってはもはや何を言っても無駄である。
夏侯惇はついに匙を投げ、それ以上の反対を止めた。
それからほどなく、趙雲は自分を取り囲む曹軍の変化を感じた。
矢が飛んでくることもなければ、戦功を求めてむやみやたらに斬りかかってくる将兵も減っている。
手加減をされているようで気味が悪いが、攻撃が緩んだ今こそ好機とばかりに馬を走らす。
だが簡単には突破させまいと、趙雲の進む先に兵が群がる。
とても無理やり突っ切り、押し通れるといった数ではない。
趙雲が兵の薄い箇所を探し、馬を走らせているところへ数騎の兵が挑みかかってきた。
兵は趙雲に体当たりしそうなほどの勢いで接近すると、趙雲と刃を交えた。
「趙雲殿、我らが援護しますゆえ戦う素振りを」
兵はそう囁くと、趙雲と一旦距離を開く。
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