第二部 七章

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追撃してくる曹軍は一兵たりともおらず、かの二人が追走しているだけであった。 「曹軍は我らの仲間が食い止めております。しかしまだ曹軍の囲いを抜けたわけではございませんぞ」 趙雲の心を読んだかのように男が語り、更にまだ気を抜くなと注意を促す。 それからしばらくは敵のいない位置を察しているのか、男の指示通りに進み曹軍と遭遇することはなかった。 そしてやや開けた道に出る。 ここには幾重にも曹兵がひしめいていた。 「趙雲殿、ここが最後です。一気に、脇目も振らずにひたすら突っ切ってくだされ。この道を直進すれば張飛殿のいる長坂橋に到達しますぞ」 男の叫び声が呼水となったのか、曹兵の意識が趙雲らに向く。 同時に曹兵の脇から黒装束の群れが現れ、飛刀のような武器や弓矢で曹兵に攻撃を仕掛ける。 趙雲は男の言葉を信じ、一心不乱に剣を振るって猛進した。 中にはそれなりに名の通った将もいたかも知れないが、お構いなしに突進する。
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