第二部 七章

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そのあまりの激しさに趙雲の周りは噴水のごとく赤い水を次々と噴き上げる。 これには敵味方問わず目を丸くした。 そして遂に趙雲は群集の最後の兵を斬り捨て抜け出した。 青コウの剣もこれほどの斬撃には耐えきれなかったようで、柄の部分を残して刃は兵に突き刺さったままである。 趙雲自身も頭の先から足の先まで幾重にも血が塗り重ねられ、全身真っ赤に染まり、僅かに兜から見える髪が黒いだけというほどであった。 趙雲は息苦しさを耐え、ひたすら直進し、群集を後にした。 黒装束の者らがしつこいくらいに攻撃を仕掛けているためか、先の趙雲の鬼神ぶりに恐れを為したせいか、追いかける曹兵は一人としていない。 「趙雲殿、御無事で」 趙雲を誘導してくれた男の声が後方から聞こえる。 礼をする暇など到底なく、また出会った時は必ず恩に報いると趙雲は心中固く誓った。
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